都市化が進む農業用水路における水管理のあり方に関する研究
日本においては、都市化の無秩序かつ急激な進行により、従来は農地であった土地が都市的土地利用に変化してきた。他方、農地への取水は旧来からの水利権量にもとづいて、時には過剰な取水がなされているとの批判を受ける対象ともなる一方、都市域の排水河川として新たな役割を果たしつつあるとの指摘もある。また、人工的な水路であるにしても、利用の方法如何により、豊かな二次的生態系を回復することも不可能ではないことが示唆されている。
農業水利施設自体には、その流路に歴史的変遷はあるにせよ、有史以来の長い歴史をもつ生活インフラとみなすことができる。むしろ、そのインフラの役割が歴史的に変化するのは当然のことであり、インフラの存在自体の可否を問うよりも、インフラを歴史的な変遷、環境の変化にも対応して、持続可能な弾力的な活用をどのようにしたらよいのか、ということが重要な課題であると考える。
都市化自体も高度経済成長期における都市域の急激な拡大を背景とした過渡的な現象とみなすこともでき、より長期の視点では、人口減少も予測される2050年以降には、新たな局面を迎えていることは想像に難くない。短期的視点では見えなくても、少し長期な視点にたてば十分に想定されうる状況下にあっても、農業水利インフラが、異なるセクター(都市、農業、工業)の利害関係を調整して、フルに活用されうるあり方を考究することは、非常に価値の高い研究であると考える。