システムという言葉自体が学術的に使用されだしたのは、百科事典の編纂が盛んに行われるようになった時期にまで遡ることができるという(河本)。百科事典の編纂という発想自体が世界のあらゆることを「体系」だてて記載し尽くすという発想にもとづくものであり、ヨーロッパ列強による植民地支配と並行して進んだであろう世界認識の変革と軌を一にしていると想像できる。システム(system)は体系と翻訳されることもあるように、百科事典編纂的な発想を表現したsystemが体系と表現され、日本語に根づいている。一方、現在の我々にとってのシステムという言葉は、「体系」が意味する内容とは重なりながらも異なり、より動的なニュアンスを強く含んでいるように思う。現代的なシステムの定義は、ノ―バート・ウィーナーによるサイバネティクス(1948)、フォン・ベルタランフィによる一般システム論(1945)に始まる。ベルタランフィによる一般システム論の射程は壮大であり、そこにはまだまだ多くの忘れられた重要な視点が提起されているようである。いずれじっくり検討してみたい。いずれにしても、システムは、複数の相互作用(相互連関)する要素から構成され、その連関からつくりだされる総体のことを指す。そのため、システムと考えられる対象を構成する要素を同定することだけではシステムの理解にはならず、要素、つまり、「もの」がどのように「こと」を作り上げるのか、その原理を明らかにするのがシステム論全体に共通する固有の視点となる。